『神凪ノ杜龍神奇譚』発売日! - 2018年10月25日
皆さま、こんばんは。
Matatabiの恵曇あやです。
お久しぶりになってしまって大変申し訳ありません。
ここ数回まめ丸さんにブログ更新をお願いしていましたが、
ようやく忙しさもひと段落つきました。

さて、本日はとうとう『神凪ノ杜龍神奇譚』の発売日ですね!
公式サイトではカウントダウンボイスを、twitterではイラストを公開中ですが、
もうご覧になっていただけたでしょうか?
まだの方はぜひチェックしてみてくださいね。

さて、それではさっそく雑誌掲載情報からまいります!


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雑誌掲載情報&人気投票について
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10月25日発売の「SweetPrincess」様に『神凪ノ杜』の記事を掲載していただいております。

また、10月20日発売の「B's-LOG」様に『神凪ノ杜』の記事を掲載していただきました。

ぜひご覧ください。


人気投票について
本日より1週間後、11月1日から『神凪ノ杜』公式サイトにて人気投票を行います!
人気投票の受付は11月1日~12月1日まで、結果発表は12月6日を予定しております。
『神凪ノ杜』をプレイ後、皆さまぜひ投票してみてくださいね。
一位になったキャラクターは、描き下ろしイラストSS
『神凪ノ杜』公式サイトにて掲載予定です!

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『神凪ノ杜龍神奇譚』発売記念SS!
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本日は神凪ノ杜龍神奇譚の発売日ということで、書き下ろしSSをお届けします。
少し長いですので、お時間あるときに読んでみてくださいね。


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『式妖の食事』

 晩秋のある日、朝食を食べ終わり、台所でお皿を洗っていると、戸を開けて旭が現れた。
「おはよう、旭。今帰ってきたの?」
 旭は一昨日から、よろず妖屋の仕事で屋敷にいなかった。
 お皿を洗いながら振り向いて、ふと旭が腕に籠と段ボールを抱えているのに気付く。籠の上には布が被されていて、中身が何なのかは分からない。
「はい。……こちらは柿です。依頼主の方からいただきました」
 私の視線に気付いた様子で、旭が籠を軽く持ち上げて言う。
「旬のものですので、きっとおいしいと思います。お嬢様は柿はお好きですか」
「好きだよ。食べるの楽しみだな」
 お皿を洗い終わり、水道の水を止める。
「お嬢様は今から学校でしたか」
「うん。……ところでそっちの段ボールは?」
「こちらは屋敷の門の前に置かれていまして……」
 そう言って旭が段ボールを開き、こちらに近付いてくる。私は濡れていた手を拭いて、段ボールの中を覗き込んだ。
「わあ、可愛い」
 段ボールの中には子猫がいた。目が合うと、細く高い声で「にゃあ」と鳴く。
「どういたしましょうか」
「えっと、ちょっと待ってね……」
 ポケットからスマートフォンを取り出し、子猫が食べるものなどを検索する。
「この子は歯がそろってるから、ミルクじゃなくて離乳食をあげた方がいいみたい」
「なるほど……」
 検索結果を見せると、旭は真剣な顔で読み始める。
 そのとき、玄関の方から「木南、置いてくぞ」と仁科先輩の声が聞こえてきた。
「ごめんね、旭。私そろそろ学校に行かないと……」
「分かりました。ひとまず、この猫は屋敷で世話していてよろしいですか?」
「うん。スマホは旭に貸しておくから、何か分からないことがあったらこれで調べて」
「はい」
 しっかりと旭が頷く。
「私も学校で、飼ってくれそうな人探しておくね」
 鞄を持ち、玄関へと向かう。その途中で部屋から出てきた日向に会った。
「おはよう」
「おはよう、日向。聞いて、今旭が――」
 言いかけて言葉を止める。日向は猫が苦手だから、猫がいると知ったら嫌がるかもしれない。
「……旭が、お土産持って帰ってくれたって」
「土産……?」
「うん。台所にある籠の中に入ってるよ。私はまだ見てないけど、旬のものだからおいしいと思うって。……じゃあ、いってきます」
 それだけ言うと、日向と別れて急いで歩き出す。
「遅えぞ」
 玄関に着くと、仁科先輩が待ちくたびれた様子でじろりと私を睨んだ。
「すみません、子猫のこと調べてて……」
「子猫? どうして?」
 宋太くんが首を傾げて尋ねる。
 私は学校へ向かいながら、二人に旭が子猫を拾ってきたことを話した。
「学校着いたら、俺も飼ってくれる人探してみるよ」
 話を聞き終えると、宋太くんが言ってくれる。その隣で仁科先輩が「そういえば」と呟いた。
「ちょうど俺のクラスに猫飼いたいっつってた奴いたな」
「本当ですか?」
「ああ、子猫のこと言ってみる。まあでも実際に飼うのは無理かもしれねえから、一応お前らも探しとけよ」
「分かりました」
 子猫はとても可愛くて、家で飼いたい気持ちも本当は少しあったのだけれど、自分は学校やよろず妖屋の仕事で外出していることが多いので、ちゃんとお世話してあげられる人に託した方が、子猫のためだろう。
 ……いい飼い主さんが見つかるといいな。

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「おはよう、日向。どこへ行くのだ?」
 廊下を歩いていると、ふと広間から声がかかった。目を向けた先では、東雲がテレビの前で寝転がっている。
「台所」
「む、もしや食い物か?」
 そう言うなり、東雲は顔を輝かせていそいそと立ち上がった。
 一瞬、言わない方がよかったかと考える。
 しかし、誰も見ていないところで旭の土産を見つければ、東雲は食い尽くしてしまうだろうし、自分が見張っておいた方がいいかもしれない。
「旭が土産を持って帰ったんだと。何なのかは聞いてねえけど、旬のものらしい」
 答えると、東雲は笑顔で台所へ向かう俺の後についてくる。
「そうかそうか、それは楽しみだ」
「全部は食うなよ」
「大丈夫だ、分かっておる。僕が今までそのようなことをしたことがあったか?」
 数え切れねえほどあるっつうの。

 台所に入ると、旭が一人で椅子に座っていた。
「おお、旭! おかえり。土産があると聞いて来たのだが」
「はい。夕餉の後にお出ししようかと思っています」
 頷いて旭が答える。
 俺は土産が何なのか聞こうと口を開きかけて――固まった。
 台所のテーブルの上に、籠に入った子猫がいたからだ。
 あいつは土産は台所の籠の中に入っていると言っていた。まさか、この子猫が土産なのか……!?
 動揺しつつ、他に台所に籠がないか見回してみる。しかし子猫の入っている籠の他には一つもない。
 自分の常識では猫を食べるなどあり得ないが、もしかして式妖は猫を食べるのだろうか。
 考えながら、ちらりと子猫を見る。子猫はつぶらな瞳で俺を見て、「にゃあ」と鳴いた。
 猫は嫌いだけど、さすがに食うのは……しかもこんな小せえの……。
「どうしたのだ、日向。顔が青いぞ」
 訝しげに東雲が尋ねてくる。俺は旭に聞こえないよう、土産は子猫らしいことを伝えた。
「な、なんだと? い、いやしかし、命は等しく平等。牛や豚はよくて猫は駄目だというのは、間違いなのやも――」
 言いながら東雲が子猫に目を向ける。子猫は籠の中で数歩歩いて、ころんと転がった。
「く……っ、僕は一体どうすれば……」
 どうやら激しく葛藤している様子だ。
「つうか、旬なのか……?」
 猫の旬など、今まで聞いたこともなかったのだが。
 思わず呟くと、旭は籠に敷かれた布を子猫に掛けてやりながら、「やはり今くらいの時期のものが一番だと思います」と答えた。
 その手つきは優しいが、これから食べようと考えているのかと思うとぞっとする。
「……おい、いったん出るぞ」
 小声で東雲を促し、旭を残して台所の外に出た。

「――どうする、あれ」
「うむ……やはり止めた方がよいのではないか? 子猫が可哀想だ」
「そうだよな。じゃあさっそくあいつにそう言って――」
「待て、日向。それでは根本的な解決にはならぬ」
 東雲が慌てて言って、俺の肩を掴んだ。
「どういう意味だ?」
「子猫は食べるものではないと言えば、夜のでざーとには出ないだろう。だがその代わり、旭が一人で食べるかもしれぬだろう? 旭自身が子猫を食べたいと思わないようにすべきだ」
「……それはそうだな」
 頷いて、廊下で東雲と一緒に子猫を救う方法を考える。そこへ市丸が通りかかった。
「市丸! 聞いてくれ。旭が子猫を食おうとしているのだ。どうしたら止められると思うか?」
「何を言っているんだ。くだらない」
 呆れたような顔で一蹴される。
「本当なのだ、信じてくれ」
「馬鹿な妄想で騒いでいる暇があったら、庭の草の一本でも抜いてこい」
 縋りつく東雲を払いのけると、市丸は去っていった。
「市丸ーっ!!」
「やめろ。あいつに頼むのは時間の無駄だ」
 東雲に言って、廊下を歩き出す。
「いい考えを思いついた。ついて来い」

 ――二時間後。俺と東雲はノートパソコンを手に、台所へ向かっていた。
「これを見れば確実に、旭も心を入れ替えるな」
 東雲が満足そうに言う。
 ノートパソコンには、大量の猫の動画が保存されていた。これを旭に見せて、猫を可愛いと思ってもらい、食べる気をなくさせようという作戦だ。
 動画を見続けているうちに、猫が嫌いな俺でも庇護欲をそそられてしまった。作戦はきっと成功するだろう。

「旭、黙ってこれを見ろ」
 台所に着くと、旭の目の前にノートパソコンを置く。動画の再生ボタンを押すと、飼い主に甘える子猫の映像が流れ出した。
「これは……猫の動画ですか」
 旭は言われた通り、素直に動画を見ている。その様子を俺と東雲は固唾をのんで見守った。
「……どうだ? 可愛いだろう?」
 動画が終了すると、東雲が身を乗り出すようにして尋ねる。旭は優しい顔で頷いた。
「そうですね。食べてしまいたいほどです」
「食うなよ!」
 つい怒鳴ると驚いた様子で旭が目を丸くする。驚きたいのはこっちの方だ。どういう思考回路してんだ、こいつ。
「……駄目だ。お前にこの猫は任せられねえ」
「お待ちください」
 籠を掴んで立ち去ろうとすると、慌てたように引き止められた。
「今から食事の時間なのです。この子猫は細いので、太らせなければ――」
「てめえ……太らせてどうするつもりなんだ!」
「……手の届かないところへ行ってしまうのは、少し残念ですが」
 寂しそうに旭が微笑む。
 自分で食うくせに……こいつ実はサイコパスなのか……?
「……ちなみに、どうやって食うつもりなのだ?」
 気になってはいたが、恐ろしくて聞けないでいたことを、東雲が聞いた。
 旭は戸惑った顔で「何をでしょうか」と聞き返す。
 こいつ、とぼけやがって……!
「お前が持って帰ってきた土産をだよ!」
 子猫の入った籠を突き出して言う。旭は合点がいった様子で「ああ」と声をもらした。
「冷蔵庫で冷やしてから、皮を剥いて――」
「や、やめろ。もういい」
 つい想像してしまい、吐き気がして途中で止めた。
 大人しそうな面して、とんでもねえ鬼畜だ。
「……旭。こうなったらはっきり言おう。猫は食い物ではない。この子はどうか逃がしてやってくれぬか?」
 意を決したように、東雲が言った。すると旭は不思議そうな顔で首を傾げる。
「猫が食い物……? 何の話でしょうか?」
「お前、土産にこいつを持って帰ってきたんだろ」
「いえ、土産は猫ではなく柿です。今、冷蔵庫に冷やしていて……」
 ……なんだと?
 急いで冷蔵庫を開けると、柿が数個入っていた。
「ま、まぎらわしいな! 何でこの猫籠に入れてたんだよ!」
「もともとは段ボールに入っていたのですが、出してやると柿を入れていたこの籠の中に自分から入ってしまって……わざわざ出すのも可哀想ですので、そのままにしていました」
 旭の言葉に、頭を押さえてため息を吐く。
 この数時間は何だったんだ。
「まあよかったではないか。うまそうだぞ、柿」
 東雲は嬉しそうに笑って、冷蔵庫から柿を一つ取り出す。
 それを見て、俺はもう一度深いため息を吐いた。

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さて本日は『神凪ノ杜龍神奇譚』の発売日ですが、
もうお手に取ってプレイされた方もいらっしゃるでしょうか?
開発期間中は大変なこともたくさんありましたが、いろいろな方に助けていただいて、
なんとか今日という日を迎えることができました。
ゲーム本編は、本日発売を迎えた龍神奇譚で終わりましたが、
今後もtwitterなどで皆さまに楽しんでいただけるような
企画ができたらなと考えております。

それでは、今回のブログはここまでです。
次回からブログは月に1回の更新になりますが、
今後ともよろしくお願いいたします。
それではまた1ヶ月後に!
お知らせ | 2018年10月25日 (17:55)
©Matatabi